Abstract / Summary
人体にはもともと常在細菌が生息しており,その数は宿主である人体の総細胞数より10倍以上多いと言われている。それぞれ臓器特異的な細菌集団を形成しており,それらの集合的な機能能力と代謝産物も包含してマイクロバイオームと呼ぶ。従来,細菌の同定は分離・培養技術を基に行われてきたが,多くの細菌は培養が困難であり,真の意味での常在細菌叢の検討は成しえずにいた。しかしながら,メタゲノム解析を用いることによって分離・培養では同定できなかった細菌叢の存在が明らかになり,肺を含めた細菌叢研究が飛躍的に進歩しつつある。下気道におけるマイクロバイオームは上気道と似通った細菌叢が確認されており,健康な人でも微小レベルで誤嚥していることが想定される。一方,人体最大の細菌叢である腸内細菌叢は宿主の代謝や免疫に与える影響が大きく,その乱れ(ディスバイオーシス)が誤嚥性肺炎と関与しているとの報告も見られる。本稿では肺を含む気道および腸内細菌叢の基礎的話題にふれつつ,また,われわれが行っている細菌叢研究の一部も紹介しながら誤嚥性肺炎におけるマイクロバイオームの知見につき概説する。